梅雨時期や夏に登下校中の小学生を見ると、ランドセルを体の前に抱えて歩いているお子さんを、たまに見かけます。その子の背中を見ると、汗がびっしょり。ランドセルと同じ形に濡れたシャツが、体にピッタリくっついているのです。
ランドセルを長時間背負うことが多い子には、登下校が少しでも快適になるよう通気性の良い商品を選ぶこともポイントの一つといえます。そこで今回は、ランドセルの通気性や、通気性を良くするアイテムについて紹介していきます。
通気性が悪いとこんなデメリットが…
大人と比べると、子どもは汗をかきやすい体質です。体が小さいため体温が上がりやすいことに加え、新陳代謝が活発なことや汗腺の密度が高いことが、汗をかきやすい理由といわれます。最近は35℃を超える猛暑日も増えていますから、子どもたちが汗をかく日は増えているかもしれません。
汗をかいたら、すぐに服を着替えて体を清潔な状態にすることが求められます。そのまま放置していると、シャツなどに付着した雑菌が繁殖することがありますし、肌の弱い子だと汗疹(あせも)やかぶれが生じることだってあるでしょう。さらに、汗疹をかきむしって傷口から菌が入ると「とびひ」になる可能性もあります。こうした菌は、高温多湿な環境を好みます。ランドセルと密着している背中や肩などは、菌にとって最適な場所です。
通気性に工夫がされてないランドセルを選ぶと、こうしたデメリットがありますから、これを回避するためにもランドセルの通気性に着目することも重要なポイントといえるのではないでしょうか。
背中にピッタリフィットするランドセルは通気性が悪い?
ランドセルを試着するとき、「背中にフィットするものだと、子どもの負担を軽くできる」という話を、聞いたことはありませんか?
この話から、背中とランドセルの間に隙間のない商品を選ぼうとされる方もいらっしゃるようですが、隙間が少ないと通気性が悪くなり、子どもに大変な思いをさせてしまう可能性があります。
「背中にフィットする」とは、子どもの背中に対してランドセルが真っ直ぐに立っているか、ということ。子どもがまっすぐに立った状態なのにランドセルが傾いていると、肩や背中に無理な荷重をかけてしまい、重く感じたり痛みを感じたりすることがあるのです。つまり、背中にフィットするとは隙間のないランドセルが良い、という意味ではありません。
ランドセルの背当てをよく見ると、くぼみや溝のついている商品を見かけることがあります。凹凸でハートマークを描いたかわいらしいデザインのランドセルもありますが、これはデザインだけでなく通気性を良くする工夫でもあるのです。
また、あるランドセルメーカーでは背当てに小さな穴の開いたメッシュ状になっている商品もあります。この小さな穴が空気の通り道となって、こもった熱や水分を逃がす機能を果たしているのです。こうした商品は、通気性を意識して工夫されたランドセルといえるので、汗っかきの子には適しています。
通気性の良し悪しは「背あての素材」でも決まる
ランドセルの通気性をよくするため、メーカーでは背あてや肩ベルトなど体と密着する部分に、さまざまな工夫を施しています。こうした工夫とは別に、素材も通気性を左右する要因の一つとされます。
一般的に、牛革などの天然皮革は通気性に優れているといわれます。天然皮革は動物の皮ですから、たくさんの毛穴があります。この毛穴が呼吸をするように空気の通り道となって、こもった熱気を外に逃がしたり蒸れや雑菌を防いだりしてくれるため、通気性が良いといわれるのです。なお、背あてに使われる素材には、柔らかくて肌触りのよい「ソフト牛革」という天然皮革を使っているメーカーが多くみられます。
では、クラリーノなどの人工皮革は通気性が良くないのでしょうか。人工皮革といえば、撥水性が良く、防水機能に優れた素材というイメージがあります。このため、通気性は良くないと思われている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、最近ではランドセルメーカーの技術開発によって、人工皮革でも通気性に優れた商品が登場しています。たとえば、背当て部分には空気を通しやすい素材を使用したり、熱や水分の吸収と放出を自然におこなう新素材を使ったりと、撥水性の良い人工皮革でも汗蒸れを解消する通気性に優れたランドセルも登場しています。人工皮革では「エアーフレッシュ」「ブレスレザー」「ベロニカ」といわれる素材が、通気性や防汚性に優れており、さらに抗菌効果も高いとして人気があるようです。
汗っかきの子には「汗取りパッド」がオススメ!
ランドセルを買った後で、「通気性にも着目して選べば良かった」と後悔されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場合、後から付けられる「汗取りパッド」を使うのも一手です。
汗や熱を吸収してくれる汗取りパッドは、ランドセルの背当てや肩ベルトに貼るだけで通気性や吸水性が良くなり、汗蒸れを軽減できるアイテムです。汗疹やかぶれ、ランドセルのカビ対策にも有効ですから、汗っかきの子どもには重宝するでしょう。
ランドセルを背負っている状態だと外からパッドは見えないので、デザイン性を気にすることもありません。
ランドセルメーカーのなかにはオプションとして扱っているところもありますし、量販店や通販サイトなどでも、1,000~2,000円くらいで購入できます。いくつもの種類がありますから、ランドセルのサイズや素材などに合わせて選んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
ランドセルを選ぶ基準として、色やデザイン、重量などを気にする方は多いものの、「背あての通気性」に着目される方はあまりいません。
しかし、汗っかきの子どもにとって通気性は大切な要素です。特に、夏の暑さが厳しい地域に住んでいる方には、通気性の良し悪しもランドセル選びのポイントになるでしょう。
子どもたちは、ジメジメした梅雨も炎天下の盛夏も、毎日ランドセルを背負って登下校しています。汗蒸れを防ぐだけでも、快適になるかもしれませんので、検討してみてはいかがでしょうか。