ランドセルは、教科書や教材、筆記用具などを持ち運ぶためのカバンです。しかし、それだけがランドセルの役割ではありません。ランドセルには、登下校中の子どもたちを守る機能も備えており、万が一のときに安全・安心を与えてくれる道具でもあるのです。
ここで、荷物を持ち運ぶこと以外にどんな役割があるのかを紹介しましょう。
衝撃から身体を守る
ランドセルの厚みと耐久性は、子どもが後ろに転倒しても頭を打たないように設計されています。登下校中に子どもが転んでも、ランドセルがクッションの役割を果たしてケガの程度を抑える効果もあるのです。
実際に、交通事故に遭遇した子どもが身体を飛ばされたものの、背中のランドセルが衝撃を吸収して頭部を守ってくれたという事例もあります。もちろん、事故に遭って無傷ということはまれですが、頭部を守ることで命を救うことにつながるという点では、ランドセルが子どもの身を守ってくれるといえるでしょう。
事故だけでなく、登下校中に大きな地震に襲われた際にも、割れたガラスなどの落下物から頭を守ることもできます。
高学年になると手さげカバンで通学する子も多いですが、手さげカバンだと片手がふさがり、万が一の時に両手を使えないことがあります。特に雨に日は、手さげカバンと傘で両手がふさがり、とっさの行動に対応できないこともあるでしょう。
ランドセルだと両手が自由に使えるため、転んだ場合でも両手で体を守れることもメリットの一つ。こうした理由から、ランドセルを通学カバンとして指定している学校もあるようです。
子どもの負担を軽くする
手さげカバンと比べて子どもの身体に負担がかかりにくいことも、ランドセルを使わせるメリットの一つです。
毎日の登下校で、子どもたちは教科書や筆記用具など2~3kgの荷物を持ち歩いています。これを手さげカバンに入れて持ち運ぶと、荷物を持っているほうだけに負荷がかかります。6年間も続けると、場合によっては背骨や脊柱に歪みが生じる可能性もあるのです。成長期の子どもにとって、身体への無理な負担はできるだけ避けたいところでしょう。
ランドセルには、左右両方の肩ベルトが重さをバランスよく分散し、身体への負担を抑える工夫が施されています。
「だったら、ランドセルより軽いリュックサックの方が、より負担を軽くできるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ランドセル自体の重さは1,100~1,300gもありますから、それより軽いリュックサックの方が子どもの身体に負荷はかからないと思うのは当然です。
しかし、リュックサックに教科書などの荷物を入れて背負うと、肩ベルトが食い込んだり、歩行中にカバンが揺れて身体に無理な負担をかけたりします。その点もランドセルは、肩ベルトや背宛てなどのパーツに工夫が施されており、重さを感じにくく身体への負担を最小限に抑えられるように設計されているのです。
暗い夜道でも安心
最近のランドセルには、反射板(リフレクター)の付いた商品が多く見られます。反射板は車のライトなどで光り、夕暮れ時や雨の日など視界が悪い状況でも子どもの存在を知らせる役割があります。反射板の付いたランドセルを背負うことで、交通事故の防止にもつながるのです。
反射板のないランドセルをお持ちの方は、反射シールやステッカーといった後から付けられる商品もありますし、手軽につけられる反射キーホルダーも人気があります。子どもの安全を守るアイテムですから、ぜひ取り付けましょう。
反射板だけでなく、黄色いランドセルカバーもドライバーに注意を促すアイテムです。雨の日にはもちろん、帰りが遅くなって夜道を歩く場合でも、黄色いランドセルカバーが子どもの存在を知らせてくれます。
ランドセルカバーはオプションで付けられるランドセルメーカーもありますし、交通安全協会などが新1年生に贈る地域もあります。いつでも使えるようランドセルの中に入れておき、子どもにどういう場面で使うか教えておくと安心でしょう。
防犯上の役割
ランドセルを背負っている子どもを見ると、多くの大人は登下校中であることを認識できます。これが、手さげカバンやリュックサックだと、習い事に行くのか遊びに行くのかわかりません。実は、これがランドセルの大切な役割の一つでもあるのです。
もし、子どもが何らかの事件に巻き込まれて行方不明になったとき、恰好や持ち物などの目撃情報を得ることになります。その際、ランドセルを背負っていたという情報があれば、学校か家に向かう途中だとわかるでしょう。
これが手さげカバンだと、どこへ向かうかわからず、捜査がしづらくなる面があるのです。ランドセルを背負っていれば、地域の大人たちも子どもを認識しやすく効果的な目印になり、犯罪の抑止にもつながります。
また、防犯ブザーを肩ベルトなどすぐに鳴らせる場所へ取り付けられるのも、ランドセルを使うメリット。防犯ブザーは他のカバンにも取り付けられますが、手が届かずにすぐ使えないこともありますし、首にぶら下げると紐を引っ張られる可能性もあり、効果的とはいえません。防犯ブザーを取り付けるなら、ランドセルの肩ベルトがおすすめです。
言うまでもありませんが、子どもの身を守るにはこうした道具だけでは限界があります。「知らない人についていかない」といった基本的なことを教えるのはもちろん、防犯ブザーが使えない状況の場合は「大きな声で叫んで助けを求める」といった行動を起こせるよう、子どもの防犯意識を高めることも大切です。
まとめ
ランドセルには、転倒や事故に遭遇した際に衝撃を吸収したり両手を使え、とっさの防御もしやすかったりと、子どもの身を守るうえでさまざまな役割を果たしてくれます。反射板や防犯ブザーなどの付属品を付けることで、安全性はいっそう高まるでしょう。
このようにランドセルには、耐久性や機能性、そして安全性において、ほかのカバンにはないメリットがあります。荷物を運ぶだけなら手さげカバンやリュックサックでも可能ですが、万一のことも考えてランドセルを選んでみてはいかがでしょうか。