真新しいランドセルが並ぶ売場で商品を選ぶとき、機能やデザインに加えて「価格」をポイントにされている方もいらっしゃるでしょう。6年間使うランドセルですから、できるだけ良い商品を選んであげたいという気持ちもわかります。しかし、ランドセル売場で価格を見て「意外と高い」と思われる方も少なくないようです。
ランドセルの相場は、いったいどれくらいが平均なのでしょうか。また、商品によって価格に差が出る理由は何でしょうか。ランドセルと価格の関係について解説します。
ランドセルの相場はどれくらい?
まずは、ランドセルの平均価格について見ていきましょう。
一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会の調査によると、ランドセルの購入金額の平均は5万5,339円、購入金額帯の割合は、以下のような結果になっています。
■購入したランドセルの購入金額帯
・~2万4,999円 6.6%
・2万5,000~3万9,999円 12.1%
・4万~5万4,999円 24.0%
・5万5,000~6万4,999円 24.7%
・6万5,000円~ 27.8%
・不明 5.0%
出典:一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会「ランドセル購入に関する調査2021年」
http://www.randoseru.gr.jp/graph/
価格帯で見ると、もっとも多いのは6万5,000円以上で27.8%、次いで5万5,000~6万4,999円 (24.7%)、4万~5万4,999円(24.0%)と続き、4万円以上のランドセルを購入された方が全体の4分の3以上を占めています。
この調査は毎年公表されていますが、ランドセルの平均価格は年々上昇傾向にあるようです。2020年までの調査結果をみると、もっとも多い価格帯は4万~5万4,999円(2020年の割合は29.0%)がもっとも多く、購入金額の平均は2018年が5万1,300円、2019年が5万2,300円、2020年が5万3,600円と、年々上昇していることがわかります。
ランドセルの購入金額が上昇している理由
ランドセルの購入金額は、なぜ上昇傾向にあるのでしょうか。
一番の理由は少子化、つまり「一人っ子が増えた」ことが挙げられます。昔のように、きょうだいが二人や三人もいると、高いランドセルを買うのが難しい家庭も多かったでしょう。一人っ子の家庭であれば、良いランドセルを選んであげたいという余裕も生まれます。
加えて、ランドセルを購入するのが親だけでなく祖父母というケースも増えており、購入金額を吊り上げる一因になっているようです。
最近は、大手ランドセルメーカーの商品よりも、工房系ランドセルのようなオリジナル商品を求める傾向も高まっています。職人が一つひとつ手作業でつくりあげたランドセルに人気が集まっているのも、購入する方の予算に余裕が出てきたからだと考えられます。
ランドセルの価格の差って何ですか?
現在では、インターネットでもランドセルが手軽に購入できる時代です。ネットショップで販売されているランドセルには、1万円台の商品も多く見られます。一方で、デパートや専門店に行くと10万円近いランドセルが売られていることがあります。
どちらも同じ仕様に見えるランドセルですが、この価格差はどこで生まれるのでしょうか。大きな要素となるのが、「素材」「デザイン」「ブランド」です。
素材
ランドセルに使われる素材は、「人工皮革(クラリーノなど)」と「天然皮革(牛革やコードバンなど)」の大きく2つに分けられます。
人工皮革は大量生産できるため、天然皮革と比べると安い傾向にあります。平均すると3~5万円台のランドセルが多く、なかには1万円台という破格商品もあるようです。
これに対して、天然皮革は数に限りがあるため価格は高い傾向に。牛革のランドセルだと、安くても5万円台、平均すると6~8万円台くらいです。
もっとも高いのが、コードバン。馬のおしりの革を使っており、一頭の馬からランドセルのかぶせが2枚しかとれないという希少価値の高い素材です。「革のダイヤモンド」ともよばれるコートバンを使ったランドセルは、7~10万円台が相場になります。
デザイン
素材に次いで、価格差が反映される要素がデザインです。
たとえば、「刺繍」。一般的なメーカーのランドセルでは、単色でシンプルなステッチならオートメーション化された機械で縫製しているところもあります。
これに対して工房系の場合、複数の色の糸を使って縫製されているランドセルもあり、職人がミシンなどを使って手作業で作り上げています。
このほか、一つひとつのパーツでも、多くの人や時間のかかるこだわりの詰まったデザインのランドセルほど、高くなる傾向があるのです。
ブランド・希少価値
最近のランドセルは、子どもに人気がある有名なキャラクターを用いたり、海外のスポーツブランドとコラボしたりといった商品も増えています。こうした商品は、ブランド力が付加されるため本体価値にプラス1~2万円くらい高く設定される傾向にあります。
加えて、「1,000台限定」など希少価値の高いランドセルだと、さらに価格は吊り上がる傾向に。これは、他社にはない新機能を搭載した商品など、差別化する要素が多いランドセルにもいえることです。
価格だけにとらわれ過ぎるのも注意
ランドセルの価格について述べてきましたが、商品選びのポイントは価格だけではありません。高くても「子どもにとって良いランドセル」とは限らないのです。
素材に関していうと「天然皮革は高いから良い」というイメージがありますが、人工皮革も昔に比べると各段に性能が向上しており、耐久性や強度など牛革と遜色のない素材も開発されています。それに、全体重量が軽いのも人工皮革のメリット。子どもの身体に負担がかかりにくい商品も多いのです。
メーカー保証も、選ぶときに重視したいポイントです。多くのランドセルメーカーでは6年間保証が付いていますが、格安商品を扱うメーカーの中には保証のないランドセルが見られます。購入価格は安くても、すぐに壊れて買い替えるとなれば、6年間のトータル費用は高くなってしまうでしょう。保証があれば壊れたときに無料で修理をしてくれたり、修理期間中は代わりのランドセルを貸してもらえたりといったメーカーもありますから、保証内容もチェックしましょう。
そして、何よりも重要なのが、子どもの身体にフィットしているランドセルかという点。どんな高級ランドセルであっても、背負いにくかったり、背当てなどが身体に当たって痛みを感じたりするような商品だと、子どもの身体に負担をかけます。6年間使い続けるものですから、売場でフィッティングして選ぶことをおすすめします。
まとめ
ランドセルを購入する機会は、一生に数度しかありません。このため、適正価格がどれくらいなのか見当がつかないのも仕方ないでしょう。入学時には、ランドセルだけでなく学用品や勉強机などいろいろ用意するものがありますから、あらかじめ予算を決めておくのも重要なポイントです。
また、購入金額だけを比較対象にするのではなく、機能性や子どもの身体へのフィット感、保証内容などを総合的にみて決めることで、6年間大切に使われるランドセルを選びやすくなるでしょう。